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GISコミュニティフォーラム第11回のメモ

今年もESRIジャパンユーザー会主催の、ArcGIS技術情報やGIS事例に関するフォーラムが5/27〜29開催されました。
今年は、27日のプレフォーラムセミナーと29日の午後に展示会場、基調講演(後半)などを聞いてきました。
http://www.esrij.com/events/gcf/gcf2015/

ArcGIS製品の技術情報

米国Esriから昨年末にリリースされていた10.3の日本語版がようやく5月22日にリリースされました。米国では10.3.1がリリースされるか、されたかという時期です。

今まではGISアプリケーション開発に絡んでDesktopを使っていましたが、これからServerも立ち上げるので今回はArcGIS for Serverのセッションをいくつか聴きました。

ArcGIS 10.3 for Server

大きな機能追加はありません。小さな変更とバグ修正が主のリリースのようです。小さな変更では、統計情報をWeb上で(ArcGIS Server Managerから)見ることができるようなり(昔出来ていた機能が復活)、CSVへ出力しての解析が可能です。また、キャッシュタイルフォーマットの改善で性能向上(コンパクトキャッシュ Ver.2)があったそうです。エクステンションで新たにPortal for ArcGISが登場しArcGIS Onlineのようなコンテンツ管理ができるみたいです。
Server管理者向けのセッションもあり、ファイル(ディレクトリ)のパーミッションがよく問題になるので注意とのこと。ArcGISサーバーアカウントでの読み書きが可能か要チェックです。また、SQL ServerにもArcGISサーバーアカウントが必要です。
ラスターデータの関数処理(ジオプロセシングツールではなく)で表示することで性能が向上、これは関数処理がメモリ上の処理のため(ジオプロはジオデータベースに吐き出すので)。

ArcGIS 10.3 for Desktop

ジオプロセッシング(GIS処理機能)が34個追加、PDF(GeoPDF)からTIFF(GeoTIFF)への変換、ライセンス付きファイルジオデータベース、時空間ホットスポット解析(NetCDFを作って解析)、ラスター機能強化(NetCDF、HDF、GRIBのファイル形式をモザイクデータセットで扱えるようになった、ベクトル場レンダラーが追加され気流のベクトルシンボル表示などが可能となりました。また、ラスター関数が追加され、標高データの欠落部の穴埋め関数など。
ArcGIS Proという新たなアプリケーションがこのバージョンから登場、2D/3D表示(連動表示可能)、3Dデータ編集などが1つのアプリで可能になりました。64bit対応/マルチスレッド対応、描画エンジン刷新とのことですが、まだ機能はArcMap等に追いついていないそうです。SDKの提供は次バージョン以降です。

高度な編集のセッションでは、CADデータなどを地図にぴったり載せる方法や、湖の中に湖岸道路が入ってしまった場合などの補正(ずらし方)などのテクニック紹介ほか。

地図表現のセッションでは、DEM(デジタル標高モデル)データからの陰影、段彩作成の方法、道路、鉄道などのベクターデータのシンボル表現などの方法を紹介していました。DEMからの陰影、段彩はよく行う作業ですが、適用アルゴリズムやカラーマップの標準偏差をいじって色合いを調整するところまではやれていなかったので参考になりました。

展示会

ディスプレイメーカーのEIZOから、正方形(1920×1920)の液晶ディスプレイが展示されていました。地図は細長いディスプレイより正方形がいいですね。ちなみにプログラミングにもいい感じでした。

パナソニックからは、屋外(フィールド)で使えるタブレットPC(TOUGHPAD)が展示されていました。タッチパネルのモードをいくつか切り替えられるようにして、水滴がかかるときでも操作できるモードや、手袋をはめても操作できるモードなど、屋外ならではの対応がありました。手袋でもピンチ操作(マルチタッチ)が出来ていました。

東京地図研究社からは、多重光源陰影段彩図の展示がありました。従来の陰影は、光源を左上45度の1点で陰を付けていましたが、地形の場合、たとえば北西から南東に斜めに延びる地溝があっても左上方向の光源だけからは陰ができません。そこで、3方向(0度、90度、270度)からの光源による陰影をそれぞれマゼンタ、イエロー、シアン(色の三原色)で付けて合成することでより再現性の高い陰影を付けることができるという手法です。百聞は一見に如かずなので次のURLを参照してください。
http://www.t-map.co.jp/products/maprepresentations.htm

ArcGIS for Serverをこれからはじめるには?とESRIジャパンのブースで質問したところ、インストールガイドのあとにチュートリアルがあるのでそれをなぞるのがよいそうです。なるほど。

基調講演

民間気象会社ハレックスの、地形と気象という演題での講演です。メリハリのある、トピックも分かりやすく噛み砕いた説明で、徹夜明けという悪条件でしたが(ArcGIS Runtime SDK for Androidに振り回され・・・)、睡魔に襲われることなく聴講できました。
気象庁が提供する一次データを、利用者(おもにシステム開発会社)に向けてトコトン使いやすい形で提供することをトコトン追求しました、という内容です。ただで入手できるデータを、トコトンによって売れるものにする(欲しいものに形作る)というのがものづくり意識にも響くものがありました。
1kmごとの5分(?)ごとの予報とか、Web上での流線動画の提供(性能/可視化に見合うGISがないから5年前から自社GISを作ってるとのこと)など、きめ細かいものがいろいろありました。JR東日本の全駅のピンポイント予報がサービスされているそうです。

感想

GISというのは、いろいろな分野(農業、医療、気象、行政、UAV、建設、防衛、防災、衛星観測、その他たくさん)で活用されているので、ソフトウェア技術の中でも幅広い内容を見聞きできる分野の1つです。いろいろ知的な刺激があってたいへん興味深いです。